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GCRC Quarterly Vol.2 (2016年2月)

グローバル・コンパクト研究センター研究員 / 大西 祥世

はじめに
本年2016年は、企業における女性のエンパワメントの取り組みが大きく飛躍する節目の年になることが期待されています。 グローバル・コンパクト研究センター(GCRC)では、季刊連載「GCRC Quarterly」にで、各研究員がそれぞれの視点で、国連グローバル・コンパクト(UNGC)や企業の社会的責任(CSR)について紹介します。第2回目の今回は、UNGCのGC10原則を、ジェンダー平等や女性のエンパワメントに焦点を当てて実現することをめざす「国連女性のエンパワメント原則(Women’s Empowerment Principles。以下、「WEPs」といいます)を取り上げます。

1.「国連女性のエンパワメント原則(WEPs)」とは
WEPsは、2010年3月に、UNGCとUN Womenの共同事業として、39社のCEOの支持表明をともなって発足しました。企業が、経営や事業戦略として、職場、市場、地域におけるジェンダー平等と女性のエンパワメントの推進に取り組むための指針となる7つの原則です。副題に「男女平等の推進はビジネスそのものである」とあるように、企業が、職場(社内)だけではなく、社外の取引先、同業者、女性の起業家、政府、市民社会といったステークホルダーと協働して女性のエンパワメントに取り組むことが、ビジネスをも成長させるという考え方に基づいて作成されました。 WEPsには、その7原則に賛同した企業のトップが「支持表明書」に署名をすることにより、参加できます。要件は、従業員10人以上の企業であることのみです。WEPsに参加した企業は、WEPsを単なる紙上の飾りとするのではなく、その内容を実践することが求められます。WEPsは、女性の活躍促進に積極的に取り組みたい企業に活用され、2016年1月末現在、世界75か国の1137社が参加するイニシアティブに成長しました。参加企業を地域別にみると、ヨーロッパが35%、アジアが33%です。日本からは214社のトップが支持を表明して、参加しています。
国連は、毎年3月にWEPs年次会合を開催して、国連機関、企業、市民社会、アカデミア等から熱意あふれる好事例の報告と討論が行われます。昨年2015年の年次会合では、企業だけではなく、ステークホルダーの政府、市民社会、アカデミアでも活用することをめざす「ステークホルダー宣言」が採択されました。また、年次会合のほか、インターネット上で行われるミーティングであるウェビナーの開催も活発です。2015年は、女性の健康の権利や育児介護休業等をテーマに、合計8回開催されました。

2.日本へのインパクト
 これまでも日本の企業は自主的に、職場における女性の活躍やダイバーシティを推進してきました。仕事と育児・介護との両立支援にも熱心で、育児介護休業法よりも充実した制度を設ける企業も多く見受けられます。それでもなお、第1子出産後に仕事を辞める有職女性の比率は約6割で、この30年間それほど変わらずに高いままです。他方、管理職になる女性の比率は約1割で、伸び悩んでいます。  そこで、「女性の職業生活における活躍推進法」が制定され、2016年4月1日に施行されることとなりました。従業員301人以上の企業は、さまざまな法律上の義務が課されます。たとえば、@取り組みの実施によって達成しようとする目標、A取り組みの内容およびその実施時期、B採用した労働者に占める女性労働者の割合、男女の継続勤務年数の差異、労働時間の状況、管理的地位にある労働者に占める女性労働者の割合、について、数値を用いて定量的に定めて、開示することが求められます(第8条)。従業員300人以下の企業は努力義務ですので、これまでと同様に、自主的な取り組みが期待されます。
 さらに、2015年12月に閣議決定された「第4次男女共同参画基本計画」には、日本政府がWEPsの周知を行うことが盛り込まれました。こうして、WEPsの趣旨は日本の法制度に組み入れられることになりましたが、それ以上に、企業側の自主的な取り組みが期待されます。

3.WEPsをものさしにした自己評価の試み――GCRCの活動
WEPsは7つの原則に沿って、企業が女性活躍の進捗状況を公表することで、次の展望や課題を明らかにしようという機能も備えています。そこで、GCRC は、国連WEPs事務局や日本国内でWEPsを推進する機関や団体の協力を得て、人権CSRの最新動向を紹介するとともに、UNGCが作成した「WEPs自己評価ツール」を使ったワークショップを、2014年から2016年の間に大阪市、東京都文京区、横浜市にて開催しました。各回では、フロアの皆さんと、グローバル・スタンダードと日本の国内法基準の関係、女性の活躍促進に取り組む企業として開示を求められる情報の内容や程度、職場に加えて市場と地域での取り組みの広がり等について、活発な意見交換ができました。 このように、GCRCは、国際的な基準や原則のしくみを活用して人権や女性の活躍を促進することで、一歩前に出るCSR、企業経営を考える研究活動を行っています。

4.WEPsの国際的なインパクト
 WEPsは国連機関を超えて、国際社会でも広く活用されています。最近では、クオータリー第1号でも扱いましたが、2015年にドイツで開催された「G7エルマウ・サミット」の首脳宣言に、「我々はしたがって、国連女性のエンパワメント原則を支持し、世界中の企業に対して、その活動に女性を組み込むよう要請する。我々は、女性に関する新たなG7作業部会を通じた取り組みで連携する。」と、G7政府によるWEPsの支持と活用が盛り込まれました。また、WEPsの「原則5」に含まれる女性の起業支援に関して、「附属書」が添付され、その取り組みを強化することが宣言されました。なお、ドイツ政府は、同首脳宣言のWEPsに関する内容をテーマにフォローアップ会合を開催して、2016年のG7サミットにその成果を反映させようと試みています。

おわりに WEPsのこれから
WEPsの特徴は、職場内だけではなく、企業が市場や地域と連携・協働して、さらにそのビジネスの力を用いて、社会における女性のエンパワメントを実現しようという企図で作成されたことです。国連が2015年9月に採択した「持続可能な開発目標(SDGs)」は、国連、政府、企業、市民社会がともに、地球規模でもコミュニティでも、誰一人置き去りにしない/されない、より良い社会を構築しようという壮大な目的をもっています。「すべての人々の人権を実現し、ジェンダー平等とすべての女性と女児の能力強化を達成することを目指す」SDGsは、WEPsと同じ趣旨です。日本における女性の活躍促進も、今後は、そうした取り組みの一環として大きく発展することが期待されます。



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