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【8】女性のエンパワメント原則
(WEPs;Women's Empowerment Principles)

「女性のエンパワメント原則」の概要
1 ジェンダー平等を実現するために、企業においてハイレベルなリーダーシップを作り出しましょう。
2 職場ではすべての女性と男性を公平に扱いましょう。人権を尊重し、支持し、差別をしないためです。
3 すべての女性労働者と男性労働者の健康、安全、福利厚生を確保しましょう。
4 女性に対する教育、研修、専門的能力開発を促進しましょう。
5 企業開発、サプライチェーン、マーケティングの実務において、女性のエンパワメントを実践しましょう。
6 コミュニティへの参画とアドボカシーによって、平等を促進しましょう。
7 ジェンダー平等を達成するための進捗状況を計り、広く公表しましょう。

概 要
経済活動のすべてのセクターとすべてのレベルに女性が全面的に参画するよう女性をエンパワーすることは、次の目的を達するのに不可欠です。
    □ 強い経済を構築します。
    □ より安定した公正な社会を作り出します。
    □ 国際的に合意された開発、持続可能性、人権の目標を達成します。
    □ 女性、男性、家族、コミュニティの生活の質を改善します。
    □ ビジネスの経営と目標達成を前進させます。
しかし、女性の才能、スキル、経験、エネルギーを取り込むことを確実にするには、意図的な行動と熟慮された政策が求められます。「女性のエンパワメント原則」は、UN Womenと国連グローバル・コンパクトのパートナーシップ事業であり、民間セクターが職場、市場、コミュニティにおけるジェンダー平等を推進するのに必要な要素に焦点を当てて行動するのを支援するため、考慮すべき論点を提供します。
企業の方針と経営を開放して女性を取り込むことを強めるには、結果につながるテクニック、ツール、実践が求められます。「女性のエンパワメント原則」は、国際的な多様なステークホルダーとの助言の過程を通じて作り出されたものであり、企業が現在の実務、ベンチマーク、報告実務についての調査や分析ができるようにする「ジェンダーのレンズ(ジェンダーの視点による見える化)」を提供します。

企業の実際の取り組みを紹介することで、「女性のエンパワメント原則」は、企業が女性のエンパワメントを実現するためにすでにある方針およびプログラムを仕立て直したり、新たに仕立てたりすることを支援します。ジェンダー平等の達成にはすべての行動主体の参画が求められるので、「女性のエンパワメント原則」は、政府と市民社会の関心を反映するとともに、ステークホルダー間の共同行動を支援します。UNWomenはジェンダー平等のリーダーとしての数十年間の経験を持ち、その経験を135カ国以上にある8,000社以上の民間企業とその他のステークホルダーとともに世界最大の企業市民のイニシアティブとなっている国連グローバル・コンパクトとのパートナーシップの取り組みに提供しました。
グローバル化と連動化が拡大する世界の中で、すべての社会的および経済的な資産を活用することが成功のカギです。しかし、進歩も見られるとはいえ、なお女性は差別、周縁化、排除と直面し続けています。たとえ、男女平等が広く国際的な規範、つまり基本的で不可侵な一己の人権として確立しているとしても、です。市民的、政治的、経済的、社会的、文化的権利を定めている国際的な人権諸条約によって、国家に対して構成された人権の基準をほぼすべての国々が認識し、その価値を肯定しています。また、さまざまな個別文書が、女性、先住民、子ども、労働者、障害者の人権についての国家の責任と保障する範囲に脚光を当てています。さらに、1995年の第4回世界女性会議で参加189カ国すべてにより採択された北京宣言や、2000年に189カ国により採択された国連ミレニアム開発目標のような国際合意文書は、包括的な人権枠組みの形成に貢献しています。
これらの国際的な基準は、私たちに共通する願望、すべての人にチャンスのドアが開いている社会を照らし出します。それは、暴力のない生活ができる社会、法的な補償を求められる社会、国家が女性、男性、子どもの人権を尊重し保護する義務を実現し、教育や保健に関する政府のサービスが適切に提供されることが期待される社会です。
これらの諸条約は、国内法に盛り込まれ、世界中の機関によって採択された共通の価値の形成を支援します。リーダー同士で、また、政府、NGO、国連とともに仕事をしている企業のリーダーは、具体的な企業の方針やプログラムにより、個人の権利を守るこれらの国際的な基準を活用しようとします。こうした企業の関与は、企業行動綱領に反映されて、方針や実践の報告書の公表を通じて支えられており、これらの価値が企業と企業社会にとってどれほど重要かの認識の向上を証明するものです。
企業責任、ダイバーシティ、インクルージョンの原則と行動を統合することによって多くのことが成し遂げられましたが、女性の企業―CEOのオフィスからサプライチェーンの工場のフロアまで―における完全な参画はいまだに十分には実現されていません。ジェンダー・ダイバーシティがビジネスに役立つことを示している最近の研究は、企業自身の利益と公共の利益がともに実現できることへのよりよいシグナルとなっています。UN Women、国連グローバル・コンパクト、その他主要な国連機関、世界銀行、世界経済フォーラムは、この発見を補強します。女性を取り込むことが開発を進めることを認識し、国連ミレニアム開発目標の達成や国家の経済開発計画がジェンダー平等に向けて急速に動き出すことを求めていると認めています。

グローバルに相互に依存する政治的、社会的、経済的な環境において、パートナーシップは、次のようにますます重要な役割を果たします。
    □ 女性と男性に機会を拓く、アクター、協力者、支援者、イノベーターによる幅広いスペクトル(層)を巻き込んだ活発なビジネス環境を作り出します。
    □ 政府、国際的な金融機関、民間セクター、投資家、NGO、研究機関、専門家の団体がともに働き、能動的で対話的な参加を実現します。
こうしたパートナーシップに基づき、UNWomenと国連グローバル・コンパクトは「女性のエンパワメント原則」を提案します。この原則が目標を示す「ジェンダーのレンズ(ジェンダーの視点からの見える化)」として活用され、すべてのレベルで女性に効果をもたらすように鼓舞し、強めて後押しすることを期待します。 平等推進は、まさにビジネスなのです。

1 リーダーシップによるジェンダー平等の推進
a. ジェンダー平等と人権について、ハイレベルの支援を積極的に行い、トップレベルの方針を指揮しましょう。
b. ジェンダー平等に関する全社的な目標と対象を設けて、管理職の人事考査の要素として進展させましょう。
c. 平等を進める企業の方針、プログラム、実行計画を発展させる際は、社内外のステークホルダーを参画させましょう。
d. すべての方針をジェンダーに敏感な視点にしましょう。これは、女性と男性に異なる影響を与える要素とみなされているものです。また、平等とインクルージョンをめざす企業文化を前進させましょう。

2 均等な機会、インクルージョン、差別撤廃
a. 報酬は平等に支払いましょう。これには、手当の支払い、同一価値労働への同一賃金の支払い、すべての女性と男性への生活賃金の支払いに努力することが含まれます。
b. 職場の方針と実践はジェンダーに基づく差別のないようにしましょう。
c. ジェンダーに敏感な視点で採用と就労継続のための実践を実行し、管理職、執行役員、取締役に女性を積極的に採用して、任命しましょう。
d. すべての役職レベルとすべての領域において、意思決定過程とガバナンスの部門で女性の十分な参画、30%かそれ以上を保証しましょう。
e. フレックスな働き方の選択、休暇、以前と同じ給与と地位での復帰の機会を提示しましょう。
f. 女性と男性に、サービスや資源、情報を提供して、子どもと家族のケアへのアクセスを支援しましょう。

3 健康、安全、暴力からの自由
a. 健康に関する女性と男性への異なる影響について考慮し、安全な労働条件と有害物質からの保護を提供し、潜在的なリスクを明らかにしましょう。これにはリプロダクティブ・ヘルスが含まれます。
b. 職場からあらゆる暴力を撤廃する方針を作成しましょう。これには、言動および/または身体的な暴力が含まれます。また、セクシュアル・ハラスメントを防止しましょう。
c. 健康保険またはその他の必要なサービスを提供するようにしましょう。これには、ドメスティック・バイオレンスのサバイバーを対象としたものも含まれます。また、すべての労働者に平等なサービスへのアクセスを保障しましょう。
d. 労働者本人および家族の受診とカウンセリングのために、男女の職場の時短をとる権利を尊重しましょう。
e. 労働者と協議し、安全について課題を明らかし、取り組みましょう。これには、通勤時や企業に関連するビジネスを行う際の女性の安全も含まれます。
f. 労働者の安全を確保する担当スタッフと管理職に対して、暴力の被害女性が示すサインの研修を行い、トラフィッキング(人身取引)、労働の搾取、性的な搾取に関する法律と企業の方針を理解させましょう。

4 教育と研修
a. すべての役職レベルとビジネスのすべての領域において、女性の地位向上への道筋を拓く職場の方針とプログラムを開発し、女性の仕事ではないとされてきた領域にも女性が参入できるようにしましょう。
b. 企業が支援するすべての教育・研修プログラムへの平等なアクセスを保障しましょう。これには、識字教室、職業訓練、情報テクノロジー研修が含まれます。
c. フォーマルおよびインフォーマルなネットワークとメンタリングの機会を平等に提供しましょう。
d. 女性のエンパワメントと男女のインクルージョンに積極的な影響をもたらす企業活動事例を明らかにして発表しましょう。

5 企業開発、サプライチェーン、マーケティングの実務
a. 女性が経営者である企業との取引関係を発展させましょう。これには、零細企業や女性の起業家が含まれます。
b. 信用貸しや貸付への障壁に対する、ジェンダーに敏感な視点での解決策を支援しましょう。
c. 取引先や同業者に、平等とインクルージョンを前進させる企業の関与を尊重するよう求めましょう。
d. すべてのマーケティングとその他の企業活動において、女性の尊厳を尊重しましょう。
e. 企業の製品、サービス、設備が、トラフィッキング(人身取引)および/または労働の搾取や性的な搾取に使われないように保障しましょう。

6 コミュニティにおけるリーダーシップと参画
a. ジェンダー平等と女性のエンパワメントに取り組む模範となる企業となって、リードしましょう。
b. 単体またはパートナーシップによって、ジェンダー平等を推進し、インクルージョンを促進するためにビジネス・パートナー、サプライヤー、コミュニティのリーダーとの協働をてこ入れしましょう。
c. 差別を撤廃し、女性と女児に機会を開くため、コミュニティのステークホルダー、当局、その他の機関と協働しましょう。
d. コミュニティ内で、またコミュニティに貢献して、女性のリーダーシップを促進し、評価しましょう。また、コミュニティにおける対話では、実質的な女性の代表を保障しましょう。
e. インクルージョン、平等、人権への企業の関与を支援するフィランソロピーと助成金のプログラムを利用しましょう。

7 透明性、測定、報告
a. ジェンダー平等を促進する企業の方針と実行計画を作成しましょう。
b. すべての役職に女性を含むことを定量化するベンチマークを作りましょう。
c. 男女別に分析されたデータを使って、社内と社外で、進捗を測り報告しましょう。
d. 現行の報告義務事項に、ジェンダー指標を組み入れましょう。

翻訳:法政大学現代法研究所国連グローバル・コンパクト研究センター


 



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